立憲民主主義の確立にむけて

            

48回衆議院議員選挙にあたって

 目次

 1状況の概要

 2改革の経緯

3保守とは

    4日本型ファシズム

    5ポピュリズム

   6統治構造と格差

7構造変動

 8再生戦略         

 

 8再生戦略現在日本社会の再生戦略

○成熟社会の定義

 「成熟社会」とは、政治的には一定の教養と知性(理性)ある個人が自律して、共有する社会的価値観・規範を基礎に合意形成を図り、個人では解決できない社会的対立・紛争や社会保障等社会的(公共)問題を協力して解決していく社会と言える。一般的には次のように定義できる。

a政治的には国家権力からの自由として、言論・表現の自由、結社の自由、居住地や職業選択の自由が許容される社会

b経済的には国家から相対的に自立した市場において一定の資産や才能ある個人や企業が自由に財・サービスの生産と交換を図り豊かさを実現していく社会

 c社会的には他者の自由を侵害しないという条件の下に、個人が自由な生き方〜多様なライフスタイル、ワーク・ライフ・バランス、キャリア・パス〜を追求していくことができる社会であり、商品、職業、住居地、居住環境、地域社会、家族形態、就職企業など多様な選択が可能な社会

 d文化的には多様な生活価値観やライフスタイルが許容され、クリエイティブ・クラスが存在し、異質なものの融合による新たなものが創造される社会(創造都市)であり、民族、宗教、言語に拘らずに個人の尊厳と基本的人権が尊重され、多様で異質な他者が共存できる寛容性の高い社会であり、同化と異化という文化のダイナミズムが生じている社会

○国家と社会

 ・飯尾潤・政策研究大学院大学教授によると、西洋の政治学では、国家(state)と社会(society)の二分法をもとに議論を展開することが多く、国家は支配機構である政府を意味して国家には一般の民間人は含まれないが、多くの日本人は「自分は国家の一員だ」と思っている。また、国民(nation)は国を成り立たせている人々の集合体であり、それぞれの国に一つだけ存在するものである。

 ・日本の「官僚内閣制」は、ただ単に戦前の遺物だというだけでなく、戦後の民主化のなかで国民代表ならぬ「省庁官僚制」の頂点として機能している。官僚集団は省庁に分かれて独立しながら、関係する社会集団と密接な関係を持ちつつ独自の利益媒介機能を持っている。日本ではステートとしての日本国家が深く社会に浸透し、その境界がはっきりしなくなってきている。

 ・日本の多くの政党は組織化された政党ではなく自律性が低く、自分党と言われる個別議員の集合体である議員集団としての性格が強く、政党中心の政治活動を実行する基盤が弱い。

・選挙では、選挙マシーンと言われる後援会組織が日頃の「世話活動」の成果として義理人情で票を集め、マニフェストとして政策を訴えることは少なく、与党と野党の明確な政策の対立軸が無く、政権が選択されることは少なかった。

・首相は与党の派閥間連合の変化で総選挙と関係なく選ばれ、政党は「省庁官僚制」を通じて業界団体や利害団体の「利益媒介」機能を果たすが、国民多数の民意の集約機能が弱いため、政策の体系性の弱さにつながり、時代の変化に対応する大規模改革を難しくしている。

社会と国家の編成原理

・古代ギリシャの都市国家から現在の資本主義市場経済国家まで、支配階級(統治階層)と被支配階級(被統治階層)との間で自由や富の所有・分配をめぐって争われ、その中で「国家の編成原理」として「公共性」、「民主主義」、「自由主義」、「法の支配」、「基本的人権」という理念が創りだされ、社会の安定的発展と最大多数の最大幸福が追求されてきた。一方で、国家の存続や民族のアイデンティティを守るための「正義」が主張され、戦争や地域紛争が正当化されてきた。

・「社会の編成原理」となる「秩序形成原理」にはa自然発生的な自生的秩序(地域共同体の慣習・規範)、b理性ある自律した個人が相互に結ぶ社会契約、c超越的な宗教的信条・規範がある。現在においてもグローバルにみると、これらの三つの秩序形成原理は主要な三つの政治的信条となって混在化し、様々な国の「法・制度」に反映され、国際的緊張と紛争を生み出している。

 ・「近代国家の編成原理」となった「社会契約論」は社会の自然状態の仮定によってa「万人の万人による戦い」と考えるホッブス説と、b「人間は生まれながらにして自由である」と考えるルソー説がある。両者では国家(政府)と社会の関係が相違し、国家統治の理論根拠として、「公共性」、「民主主義」、「自由主義」、「法の支配」、「基本的人権」の意味内容が深められてきた。

○日本国憲法の立憲民主主義の確立

 ・日本国憲法は1947年に施行されて今年で100年経つが、保守的政治家や文化人だけでなく一部のマスメディアを含めて、現行憲法の基本理念や憲法制定過程に疑問を呈し改憲論が主張されるようになったが、大多数の国民はこれを支持している。

 ・現行憲法はポツダム宣言に基づきGHQ(マッカーサー司令本部)の対日占領政策の一環として大日本帝国憲法の憲法改正手続きにしたがって制定されたが、当時、民主主義原理に基づく国民の憲法制定勢力の不在という欠陥があるため、その正統性に疑問が提示されている。

 ・日本国憲法の基本理念である「法の支配」は英米法に源流があり、近代憲法の基本理念となった。「法の支配」は人権を保障するために法によって政治権力を制約する原理であり、その内容は@個人の自由と平等の保障、A法の定める内容と手続きの適正、B司法裁判所に対する尊敬と優越が含まれる。

・「法の支配」の根底にあるのは「自由で平等な尊厳ある個人」と「社会」の観念である。「尊厳ある個人」を起点として「社会」が構成され、「国家」は「社会」に生起する公共的問題を解決するために人為的に作られた機構に過ぎない。人は「国家」の中で生きるのではなく、「社会」の中で自己実現を果たす存在である。

 ・平和で自由に生きるためには健全な社会が必要であり、国家は社会の健全性を保持するための存在であり、個人の尊厳➯社会の自律➯国家の補充という図式が近代国家のかたちであり、このようにして立憲民主主義の憲法が国をつくる。

・憲法前文に述べられている平和主義、国民主権、基本的人権の尊重はポツダム宣言の対日占領政策の基本であるとともに、自由で民主的な市民社会を構築していくための基本理念であり、国家のルールと活動を律するものである。

・日本国憲法において議会制民主主義の基礎条件となり自由に政治的活動が可能となる表現の自由、言論・出版の自由、集会の自由が保障された。

○地方自治の強化

 ・日本国憲法に保障した「地方自治の本旨」とは、「法の支配の原理」から人権➯地域社会➯自治体の補完と捉えられる。市民の身近な公共問題を解決するために市町村という基礎自治体があり、都道府県はより広域的な公共問題を解決するための広域自治体である。

・現在、2000年に地方分権一括法が施行され、国と地方自治体が対等の法的機関として位置づけられたにも拘らず、中央政府依存の地方自治体が多く、地方議会の空洞化やその議員の質的低下が見られ、地方議会の活性化と議員の資質向上が必要となっている。

 ・そのため、地域社会の実情に即した自治基本条例や議会基本条例を制定し、自治体経営や議会運営において情報公開を進め、住民投票等の住民参加を拡充していく必要がある。

○新たな公共性の価値規準の確立

 ・アリストテレスから現在にいたる多くの政治哲学者は公共の目的、公共の利益、公共善という人間生活(社会)における「公共的」側面に関する公共的活動や公共的価値・規範の意味内容を論じてきた。「公共性規準」として正義、公正、民主主義、自由主義、個人主義、基本的人権という価値・規範理念が創出され、国家(政府)は社会の多数者の要請にしたがって、これらの価値・規範の実現を図ってきた。

・現在では、国民福祉の拡大を目指す行政国家が肥大化・硬直化・非効率化し、社会が複雑化して諸集団間で利害対立が多くなってきたため、これまでの「公共性基準」が再検討され、国家や地方自治体の行財政改革が推進され、「新たな公」や「新たな共」によって、これまでの公共政策の代替と補完がなされるようになった。

・しかし、「競争と効率」の原理に基づくPPP(パブリック・プライベイト・パートナーシップ)等のニュー・パブリック・ガバメントの政策は市民生活に係わる領域に適用されると、民主主義や基本的人権という政治的理念と矛盾し、市民間の格差を拡大することも多い。

・そのため、公共圏と言われる民主的討議空間や合理的理性的討議空間において少数意見を尊重しつつ多数による合意形成を図ることが重要となり、立法から行政の政治過程において政策立案から実施にいたる包括的な市民参加を推進する必要がある。

○公共政策の統合化と政策効果の可視化

・公共政策は公共・共益目的の実現を図る計画行為のシステム化とプログラム化であり、ガバナンス;パブリックセクター、プライベイトセクター、サードセクターの多様な主体の参加と適正な役割分担が望ましく、そのためには計画思想の明確化・可視化と共有が重要となる。そのために、次のような指標が考えられてきた。

a社会指標;社会の成熟度、人間開発指標、社会開発指標

b都市指標;都市機能の集積性、成長力、イノベーション力、安全・安心性、衣食住の快適性

 c豊かさ指標;エネルギー・物質の消費量、多様な財・サービス、多様なライフスタイル

 d幸福度;GDPGNW、生き甲斐、社会的承認(出番と居所)、信頼性、寛容性

e地方分権;国家統治(中央支配)から地方自治(地方の自立)

○日本型多元的信頼社会の構築

 ・「信頼と寛容の和の精神」は古代社会から日本人が築いてきた自然共生や神仏習合、木と杜の生活文化、講・寄合の地域共同体の絆に基づく大規模自然災害や疫病からの不断の復興などから培われてきた日本の基底文化である。

 ・最近のインバウンド観光客の増加は個々の観光スポットの魅力でなく、日本の豊かさを示す社会保障の充実、社会資本の整備、規則正しい交通機関、安全でおいしい食品、日常生活の安全・安心だけでなく、「信頼と寛容の和の精神」からなるジャパン・ブランドに魅力を感じるからである。

○成熟社会におけるネットワーク・ガバナンスシステムの構築

 ・高度情報社会では、多くの自律したネチズン(ネット市民)がインターネットを通じて自らが所属する国家や社会の境界を越えて自由に相互に情報交流し、使命感を持ったミッション・オリエンテッドな市民団体が多く生まれ、相互に連携するネットワーク・ガバナンスによってグローバルな地球環境問題や地域社会における教育・医療・福祉・防災等の社会的問題の解決に貢献している。

 ・しかし、現実には、ゲートウェイ・ルーティングをするプロバイダーと言われるインターネット接続会社が多様な個人や諸団体のパソコンや携帯電話等のインターネット回線へ接続するポータルサイトの管理によってネットワークに流れる情報をコントロールしている。

 ・SNSの拡大にともなって、特定の仲間意識をもった人々が共通の関心や価値観に基づいて多様な情報コミュニティを形成しているが、そのようなサイバーコミュニティへ依存・埋没する人々が増加し、社会関係が平板化・狭小化し、リアルな社会関係が分断されるリスクが生じている。

・このような状況を打開し日本型多元的信頼社会を構築していくには、多様な個人や団体が情報リテラシーを高め、リアル社会において多様な社会活動に参加し、異質な他者との協働活動の積み重ね信頼関係を深めてネットワーク・ガバナンスを拡大していくことが肝要である。

○これからの国家運営(経営)のあり方

 ・小林喜光・三菱ケミカルホールディングス会長によれば、企業価値を向上し安定的経営を行うには、a自己資本利益率(ROE)等の資本効率の向上、bイノベーションの創出、c環境保全・社会貢献という3つの軸を置くことが重要である。一方、国家の価値をa経済成長(GDP)の拡大という1つの軸だけで見てはならず、bイノベーティブな科学技術と社会システム、c環境・持続可能性を含めた3つの軸で考えるべきである。国家運営も企業経営も目先の成果にとらわれず、長期的な視点が重要である。

           2017,10,11     クリエイト関西21・共同代表 上田雅治

ポピュリズム(.現代ポピュリズムの広がり) 上田雅治 立憲民主主義について から編集

 

8.現在日本社会の再生戦略

○成熟社会の定義

 「成熟社会」とは、政治的には一定の教養と知性(理性)ある個人が自律して、共有する社会的価値観・規範を基礎に合意形成を図り、個人では解決できない社会的対立・紛争や社会保障等社会的(公共)問題を協力して解決していく社会と言える。一般的には次のように定義できる。

a政治的には国家権力からの自由として、言論・表現の自由、結社の自由、居住地や職業選択の自由が許容される社会

b経済的には国家から相対的に自立した市場において一定の資産や才能ある個人や企業が自由に財・サービスの生産と交換を図り豊かさを実現していく社会

 c社会的には他者の自由を侵害しないという条件の下に、個人が自由な生き方〜多様なライフスタイル、ワーク・ライフ・バランス、キャリア・パス〜を追求していくことができる社会であり、商品、職業、住居地、居住環境、地域社会、家族形態、就職企業など多様な選択が可能な社会

 d文化的には多様な生活価値観やライフスタイルが許容され、クリエイティブ・クラスが存在し、異質なものの融合による新たなものが創造される社会(創造都市)であり、民族、宗教、言語に拘らずに個人の尊厳と基本的人権が尊重され、多様で異質な他者が共存できる寛容性の高い社会であり、同化と異化という文化のダイナミズムが生じている社会

○国家と社会

 ・飯尾潤・政策研究大学院大学教授によると、西洋の政治学では、国家(state)と社会(society)の二分法をもとに議論を展開することが多く、国家は支配機構である政府を意味して国家には一般の民間人は含まれないが、多くの日本人は「自分は国家の一員だ」と思っている。また、国民(nation)は国を成り立たせている人々の集合体であり、それぞれの国に一つだけ存在するものである。

 ・日本の「官僚内閣制」は、ただ単に戦前の遺物だというだけでなく、戦後の民主化のなかで国民代表ならぬ「省庁官僚制」の頂点として機能している。官僚集団は省庁に分かれて独立しながら、関係する社会集団と密接な関係を持ちつつ独自の利益媒介機能を持っている。日本ではステートとしての日本国家が深く社会に浸透し、その境界がはっきりしなくなってきている。

 ・日本の多くの政党は組織化された政党ではなく自律性が低く、自分党と言われる個別議員の集合体である議員集団としての性格が強く、政党中心の政治活動を実行する基盤が弱い。

・選挙では、選挙マシーンと言われる後援会組織が日頃の「世話活動」の成果として義理人情で票を集め、マニフェストとして政策を訴えることは少なく、与党と野党の明確な政策の対立軸が無く、政権が選択されることは少なかった。

・首相は与党の派閥間連合の変化で総選挙と関係なく選ばれ、政党は「省庁官僚制」を通じて業界団体や利害団体の「利益媒介」機能を果たすが、国民多数の民意の集約機能が弱いため、政策の体系性の弱さにつながり、時代の変化に対応する大規模改革を難しくしている。

社会と国家の編成原理

・古代ギリシャの都市国家から現在の資本主義市場経済国家まで、支配階級(統治階層)と被支配階級(被統治階層)との間で自由や富の所有・分配をめぐって争われ、その中で「国家の編成原理」として「公共性」、「民主主義」、「自由主義」、「法の支配」、「基本的人権」という理念が創りだされ、社会の安定的発展と最大多数の最大幸福が追求されてきた。一方で、国家の存続や民族のアイデンティティを守るための「正義」が主張され、戦争や地域紛争が正当化されてきた。

・「社会の編成原理」となる「秩序形成原理」にはa自然発生的な自生的秩序(地域共同体の慣習・規範)、b理性ある自律した個人が相互に結ぶ社会契約、c超越的な宗教的信条・規範がある。現在においてもグローバルにみると、これらの三つの秩序形成原理は主要な三つの政治的信条となって混在化し、様々な国の「法・制度」に反映され、国際的緊張と紛争を生み出している。

 ・「近代国家の編成原理」となった「社会契約論」は社会の自然状態の仮定によってa「万人の万人による戦い」と考えるホッブス説と、b「人間は生まれながらにして自由である」と考えるルソー説がある。両者では国家(政府)と社会の関係が相違し、国家統治の理論根拠として、「公共性」、「民主主義」、「自由主義」、「法の支配」、「基本的人権」の意味内容が深められてきた。

○日本国憲法の立憲民主主義の確立

 ・日本国憲法は1947年に施行されて今年で100年経つが、保守的政治家や文化人だけでなく一部のマスメディアを含めて、現行憲法の基本理念や憲法制定過程に疑問を呈し改憲論が主張されるようになったが、大多数の国民はこれを支持している。

 ・現行憲法はポツダム宣言に基づきGHQ(マッカーサー司令本部)の対日占領政策の一環として大日本帝国憲法の憲法改正手続きにしたがって制定されたが、当時、民主主義原理に基づく国民の憲法制定勢力の不在という欠陥があるため、その正統性に疑問が提示されている。

 ・日本国憲法の基本理念である「法の支配」は英米法に源流があり、近代憲法の基本理念となった。「法の支配」は人権を保障するために法によって政治権力を制約する原理であり、その内容は@個人の自由と平等の保障、A法の定める内容と手続きの適正、B司法裁判所に対する尊敬と優越が含まれる。

・「法の支配」の根底にあるのは「自由で平等な尊厳ある個人」と「社会」の観念である。「尊厳ある個人」を起点として「社会」が構成され、「国家」は「社会」に生起する公共的問題を解決するために人為的に作られた機構に過ぎない。人は「国家」の中で生きるのではなく、「社会」の中で自己実現を果たす存在である。

 ・平和で自由に生きるためには健全な社会が必要であり、国家は社会の健全性を保持するための存在であり、個人の尊厳➯社会の自律➯国家の補充という図式が近代国家のかたちであり、このようにして立憲民主主義の憲法が国をつくる。

・憲法前文に述べられている平和主義、国民主権、基本的人権の尊重はポツダム宣言の対日占領政策の基本であるとともに、自由で民主的な市民社会を構築していくための基本理念であり、国家のルールと活動を律するものである。

・日本国憲法において議会制民主主義の基礎条件となり自由に政治的活動が可能となる表現の自由、言論・出版の自由、集会の自由が保障された。

○地方自治の強化

 ・日本国憲法に保障した「地方自治の本旨」とは、「法の支配の原理」から人権➯地域社会➯自治体の補完と捉えられる。市民の身近な公共問題を解決するために市町村という基礎自治体があり、都道府県はより広域的な公共問題を解決するための広域自治体である。

・現在、2000年に地方分権一括法が施行され、国と地方自治体が対等の法的機関として位置づけられたにも拘らず、中央政府依存の地方自治体が多く、地方議会の空洞化やその議員の質的低下が見られ、地方議会の活性化と議員の資質向上が必要となっている。

 ・そのため、地域社会の実情に即した自治基本条例や議会基本条例を制定し、自治体経営や議会運営において情報公開を進め、住民投票等の住民参加を拡充していく必要がある。

○新たな公共性の価値規準の確立

 ・アリストテレスから現在にいたる多くの政治哲学者は公共の目的、公共の利益、公共善という人間生活(社会)における「公共的」側面に関する公共的活動や公共的価値・規範の意味内容を論じてきた。「公共性規準」として正義、公正、民主主義、自由主義、個人主義、基本的人権という価値・規範理念が創出され、国家(政府)は社会の多数者の要請にしたがって、これらの価値・規範の実現を図ってきた。

・現在では、国民福祉の拡大を目指す行政国家が肥大化・硬直化・非効率化し、社会が複雑化して諸集団間で利害対立が多くなってきたため、これまでの「公共性基準」が再検討され、国家や地方自治体の行財政改革が推進され、「新たな公」や「新たな共」によって、これまでの公共政策の代替と補完がなされるようになった。

・しかし、「競争と効率」の原理に基づくPPP(パブリック・プライベイト・パートナーシップ)等のニュー・パブリック・ガバメントの政策は市民生活に係わる領域に適用されると、民主主義や基本的人権という政治的理念と矛盾し、市民間の格差を拡大することも多い。

・そのため、公共圏と言われる民主的討議空間や合理的理性的討議空間において少数意見を尊重しつつ多数による合意形成を図ることが重要となり、立法から行政の政治過程において政策立案から実施にいたる包括的な市民参加を推進する必要がある。

○公共政策の統合化と政策効果の可視化

・公共政策は公共・共益目的の実現を図る計画行為のシステム化とプログラム化であり、ガバナンス;パブリックセクター、プライベイトセクター、サードセクターの多様な主体の参加と適正な役割分担が望ましく、そのためには計画思想の明確化・可視化と共有が重要となる。そのために、次のような指標が考えられてきた。

a社会指標;社会の成熟度、人間開発指標、社会開発指標

b都市指標;都市機能の集積性、成長力、イノベーション力、安全・安心性、衣食住の快適性

 c豊かさ指標;エネルギー・物質の消費量、多様な財・サービス、多様なライフスタイル

 d幸福度;GDPGNW、生き甲斐、社会的承認(出番と居所)、信頼性、寛容性

e地方分権;国家統治(中央支配)から地方自治(地方の自立)

○日本型多元的信頼社会の構築

 ・「信頼と寛容の和の精神」は古代社会から日本人が築いてきた自然共生や神仏習合、木と杜の生活文化、講・寄合の地域共同体の絆に基づく大規模自然災害や疫病からの不断の復興などから培われてきた日本の基底文化である。

 ・最近のインバウンド観光客の増加は個々の観光スポットの魅力でなく、日本の豊かさを示す社会保障の充実、社会資本の整備、規則正しい交通機関、安全でおいしい食品、日常生活の安全・安心だけでなく、「信頼と寛容の和の精神」からなるジャパン・ブランドに魅力を感じるからである。

○成熟社会におけるネットワーク・ガバナンスシステムの構築

 ・高度情報社会では、多くの自律したネチズン(ネット市民)がインターネットを通じて自らが所属する国家や社会の境界を越えて自由に相互に情報交流し、使命感を持ったミッション・オリエンテッドな市民団体が多く生まれ、相互に連携するネットワーク・ガバナンスによってグローバルな地球環境問題や地域社会における教育・医療・福祉・防災等の社会的問題の解決に貢献している。

 ・しかし、現実には、ゲートウェイ・ルーティングをするプロバイダーと言われるインターネット接続会社が多様な個人や諸団体のパソコンや携帯電話等のインターネット回線へ接続するポータルサイトの管理によってネットワークに流れる情報をコントロールしている。

 ・SNSの拡大にともなって、特定の仲間意識をもった人々が共通の関心や価値観に基づいて多様な情報コミュニティを形成しているが、そのようなサイバーコミュニティへ依存・埋没する人々が増加し、社会関係が平板化・狭小化し、リアルな社会関係が分断されるリスクが生じている。

・このような状況を打開し日本型多元的信頼社会を構築していくには、多様な個人や団体が情報リテラシーを高め、リアル社会において多様な社会活動に参加し、異質な他者との協働活動の積み重ね信頼関係を深めてネットワーク・ガバナンスを拡大していくことが肝要である。

○これからの国家運営(経営)のあり方

 ・小林喜光・三菱ケミカルホールディングス会長によれば、企業価値を向上し安定的経営を行うには、a自己資本利益率(ROE)等の資本効率の向上、bイノベーションの創出、c環境保全・社会貢献という3つの軸を置くことが重要である。一方、国家の価値をa経済成長(GDP)の拡大という1つの軸だけで見てはならず、bイノベーティブな科学技術と社会システム、c環境・持続可能性を含めた3つの軸で考えるべきである。国家運営も企業経営も目先の成果にとらわれず、長期的な視点が重要である。

           2017,10,11     クリエイト関西21・共同代表 上田雅治

 

このページはクリエイト関西21が作成しました。20171015